プラネット・グーグル

いままでは書評はあまり書かなかったのですが、これからは少し書いていこうと思います。
さて、今回のネタは最近出たグーグル本です。

プラネット・グーグル

プラネット・グーグル

グーグル本(グーグルの内部やサービスについて書いた本)は、何年も前から何冊も出版されていますが、やはり一番新しいグーグル本がその時点では一番面白い気がします。さらにこの本は、わりと近い位置でグーグルを観察してきたサンノゼ州立大学の教授の手によるもので、今まであまり知られていなかった内部情報から最新のグーグルに関するビジネス環境にまつわることまで、272ページ(日本版。ちなみにこの本は、日米同時発売とのこと。)にわたって記述されています。

第1章はフェースブックとグーグルについて。フェースブックがクローズアップされたのは2007年なので、この章は新しい本ならではの部分です。いままでのグーグル本だとグーグル礼賛になりがちだったのですが、完全にグーグルはフェースブックに遅れを取っているということが書かれています。
たしかに、グーグルが運営しているOrkutというSNSサービスは、ブラジルなどの一部の国では大人気らしいのですが、世界的には(とくに米国では)マイスペースフェースブックに後れを取り、比べ物になりません。グーグルはSNSを少し甘く見ていた、ということです。確かに、SNSで囲い込まれた世界はグーグルの検索に引っかかってこないですからね。フェースブックマイクロソフトから出資を受けてますし、SNSはこれからどうなるのか楽しみな分野です。

第2章はグーグルの売りである、大規模ハードウェア、データセンターの話です。これはわりと今までも語られてきたものです。第3章はグーグルがどれだけアルゴリズムを大切にしているかを詳細に語っています。検索結果に人間の手を加えるのは、世界最強のスーパーコンピュータが競争力の源泉であるグーグルシステムに適合できない。だからすべてアルゴリズムにするというグーグルの哲学がよくわかります。その意味では、第2章と第3章は続き物であると見ることができますね。

第4章から第6章までは、今までにグーグルが開発した、または買収したサービスについて、裏話も交えつつ語られています。Google Videoなどのサービスを例に出すまでもなく、グーグルはよく失敗しますが、それでもユーチューブを買収してその失敗を完全に取り戻します。買収の迅速さやタイミングのよさ、などのグーグルのビジネスセンスについてここで見ることができます。ちなみに第4章はGoogleブック検索(例の世界中の本をスキャンするプロジェクト)、第5章はYouTube、第6章はGoogle MapやGoogle Earthの元となった、キーホールというグーグルがかなり早い段階に買収した企業のサービスについて書かれています。

第7章、第8章は現状グーグルが置かれているビジネス環境についてです。第7章では、対マイクロソフトの攻防についてや、Gmailに広告を導入した際の逆風などについて書かれています。マイクロソフトがグーグルを極度に警戒し始めたのは最近の話ですが、それもやはりこの本には触れられていますね。総じて、マイクロソフトと比較した場合、著者もグーグル優位、と見ているようです。
第8章はまとめの章ですが、グーグルのコアビジネスである検索について、新しいシリコンバレーベンチャーがどのように挑んでいるか、それにグーグルがどのように迎え撃つのか、という話でまとめています。
最後に、グーグルの最終目標である「世界中の情報を誰もが利用できるように提供する」というミッションについて、CEOのエリック・シュミットが「300年かかる」と語った話で締められています。この300年という数字、実際に科学的に計算で出した数字とのことです。グーグルが300年存在するのかはわかりませんが、壮大な計画に向かって飽くなき挑戦を行っている、ということはわかります。

所感としては、確かに知っていることも多かったのですが、グーグルの最新の情報にアップデートできたことや、グーグルを礼賛することなく公平な視線で語っているので、その面で新鮮だったことが新しい発見でした。まだしばらく、グーグルウォッチは欠かせない楽しみになりそうです。